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3広報ところざわ令和4年1月号所沢市は持続可能な開発目標(SDGs)に取り組みます。所沢の人形産業は、昭和40年代後半の第2次ベビーブームでひな人形の需要が伸びたことから大きく発展しました。しかし、その後の出生率の低下を受け生産者も減り、今では市内に我々を含めて2軒のみ。また、マンションが増え、ひな人形を飾るスペースが狭くなったことなどから、「おひな様を飾る」という文化自体も、当たり前ではなくなってきているように感じます。倉片人形は創業から180年以上になります。「老しにせ舗の職人」と聞くと、男性が技術を突き詰めていくイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし倉片人形では、昭和40年代から職人は女性しか雇用していません。それは、幼い頃にひな人形に触れてきた経験を活かしてくれるはずとの思いからです。また、寡か黙もくな職人の世界に女性が入ることで、職人同士のコミュニケーションが活発になり、技術の継承も進みました。そのほかにも、職人は高度な技術を有する「埼玉県伝統工芸士」を目指し、日々技術を磨き、現在までに6人の職人が認定されています。ひな人形は、女の子の健康を願って贈るものです。そして、男女が対になっているのは、結婚した夫婦を表していて、将来こんな幸せな家庭が持てるようにとの願いが込められているものなのです。こうした、先人たちが作り上げてきた伝統的なひな人形の文化を、所沢という地で守っていきたい。そのために、地域の子どもたちの社会科見学を受け入れたり、所沢人形協会として啓発イベントなどを検討したりしています。ひな人形は、昔は豪華な7段飾りが主流でした。それが今ではお殿様とお姫様のみの「親しんのう王飾り」というコンパクトなスタイルが人気です。飾るスペースが少ない方は、ぼんぼりや花などの装飾がない人形だけで飾ってみてはいかがでしょうか。贈る相手のことを思う気持ちが込められていれば、飾り方はさまざまあってよいのです。一人一人のニーズに合わせて、新しい伝統の形を模索し提案していくことが、これからのひな人形文化の在り方だと思います。▲一人一体のひな人形を仕上げる。作業場は、ひな人形のシーズンに向けて大忙し▲多種多様なひな人形が並ぶ店内。きっとお気に入りの人形が見つかるはず 重ねた着物がずれないように、綿を詰めて立体的に仕上げる工程は、伝統の技術が光る瞬間。 人形の腕を曲げる作業は、かなりの力を入れているのが指の動きから伝わるほど。伝統工芸士の一人、成田五さつき月さんは「左右の腕を対称に曲げ、美しい姿勢になるように心掛けています」と、職人としての思いを語ってくれました。クローズアップ!職人の指先

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