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平成24年のスタートを飾った特集「次の世代に伝えたいもの…ふるさと所沢の『今』」は、いかがだったでしょうか。所沢に残る、あんな風景、こんな生き物…そして先人たちの努力によって受け継がれてきた「養蚕」と「人形・羽子板」。所沢の持つさまざまな『顔』に懐かしさを感じた方、驚きを感じた方、皆さんそれぞれの感想をお持ちになったことと思います。 今回の特集取材を進める中で、私たち広報課職員も、これまでに知ることのなかった所沢の「古くて新しい『顔』」を垣間見ることができました。 季節が移り変わるように、この所沢も少しずつ変化しています。 「地元・所沢を良く知っていただきたい」「この機会に改めて『ふるさと』を考えてみていただきたい」、そんな想いを込めて4頁にわたる特集を組んでみました。紙面を通じて「ふるさと所沢」にさらなる関心を持っていただければ幸いです。特集を振り返って 遠く奈良時代に子の無病息災を願うお払いの儀式を起源として、今に至ったとされる「お雛ひな様」。そして、今から500年ほど前、宮中で新年を祝い女性どうしで羽根つきをしたことが始まりとされる「羽子板」。ともに日本の催事と風習に欠かせない季節の催しとなっています。 埼玉県はひな人形の出荷額が全国第1位(経済産業省「平成21年工業統計表」調べ)を誇り、全国に向けて良質のひな人形と羽子板を送り出しています。もともと、江戸時代に浅草の職人たちが住まいを転じた岩槻・鴻巣周辺の地場の産業として定着していったものですが、所沢地域でも古くからひな人形と羽子板の産地として名をはせていました。かつて、所沢は「押※し絵羽子板の日本一の生産地」として知られていたことをご存じでしょうか? そうした伝統産業を、現在は16の会員からなる「所沢人形協会」が支えています。※押し絵羽子板…型紙を色とりどりの布にくるみ、立体感が出るように中に綿を詰めて作られたものです。 市内北秋津にある「秋月・小寺人形」を訪ねました。小寺 香さんは所沢人形協会の会長です。「ひな人形と羽子板の売上はほぼ8対2くらいです」人形飾りが全国的な風習であることに対し、羽子板の方は一部の地域での風習であることも、理由の一つだそうです。「お母さんが娘の嫁ぎ先に送ろうとしたら、先方から『これは何ですか』って…そんな話もあるんですよ(笑)」。 人形作りはおよそ380からある部品の一つひとつを組み立てて出来上がる大変手間のかかる作業です。小寺さんは職人としてのこだわりで、そのすべてを手作業で組み立てているそうですが、やはり時代の流れのせいか、機械仕立ての物もあったり、部品についても外国から大量に安いものが入ってくるそうです。「大量生産の時代とはいえ、やはり手作りの良さはあります。気持ちを込めて作ったものは、必ずお客様に伝わります。手を抜かず、想いをこめて丹念に作っているんですよ」。 日常生活の中で、目が止まる機会を増やしていくよう所沢人形協会のホームページ(http://www.tokosky.人形・羽子板伝統の催事を守る工芸品com/oserv/ningyou/)を作ったり、と奮闘しています。「『厄を流す』などとして始まった風習ですが、日本の良き風習を、親から子に愛情を持って受け継いでいただけると作り手として嬉しい限りです。ケースから出して、心に余裕を持って見ていただければ…」小寺さんの言葉から、古き伝統を受け継ぐ職人の心意気が伝わってきました。 * * * 伝統産業の人形・羽子板に光をあてる機会にしていこうと、中心市街地にある「野ところさわ老澤町まちづくり造商しょうてん店」も応援しています。毎年2月に「野ところさわ老澤雛ひな物語」を開催して、市内で制作された名品を展示し、多くの来訪者の目を引きつけています。 また、毎年6月の第1日曜日には所澤神明社で「人形供養」が開催され、全国から多くの人形たちが寄せられます。このように「人形のまち・所沢」は多くの人々の想いに支えられて、地場産業の冬の季節を乗り越えようと、着実に歩み始めているところです。▲店舗に並べられたひな人形と羽子板▲野老澤町造商店での「野老澤雛物語」展▲所澤神明社での人形供養祭▲雛人形を作る小寺さん【所沢市の人形・羽子板】▼明治初期ころから産地となる▼岩槻、鴻巣などと並ぶ主要産地の一つ▼現在の所沢人形協会には都下や県内他市も含め16の会員が所属▼販売は店売りが中心、使用した帯や着物地を利用するなど、豊富なアイデアも制作現場を訪ねて取材協力養蚕農家 小暮晴彦さん、小暮房子さん、小暮重行さん、小暮由木子さんほか人形制作 小寺 香さん資料提供 野老澤町造商店参考資料 所沢市の農業(農政課発行)、ところざわ歴史物語(教育委員会発行)、ひなの里羽子板のまちところざわ(所沢人形協会発行)特集「次の世代に伝えたいもの…ふるさと所沢の『今』」5 広報 平成24年1月号広報 平成24年1月号

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